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京極夏彦さんの執筆された作品を紹介しています。


豆腐小僧双六道中ふりだし


豆腐小僧双六道中ふりだし

豆腐小僧双六道中ふりだし
【発売:2003年12月】

江戸時代に出版された黄表紙などで人気を博したという妖怪「豆腐小僧」が、自らの存在理由を求めて旅をする。
豆腐を載せた盆を手に、ただ立ちつくすだけの妖怪である自分は、豆腐を手放すと、ただの小僧になるのか、それとも消えてしまうのか。
男女の色恋に赤面し、自分以外の妖怪におののいてしまう軟弱さにもかかわらず、胸に去来するのは「消えたくない」という強い思い。
お盆の豆腐を落とさないように気遣いながら、豆腐小僧の珍道中がはじまる。

著者は、『嗤う伊右衛門』や『覘き小平次』など、怪談話を斬新な解釈で現代に蘇らせる一方、『どすこい(安)』などのパロディー小説も手がけてきた京極夏彦。
本書では、史実のうえでも来歴のはっきりとしない妖怪の自分探しをテーマに、自由な発想と膨大な知識を駆使しながら、幕末を舞台とした冒険物語へと仕立てあげている。
講談調のひょうひょうとした語り口と、豆腐小僧のとぼけた味わいが、おかしみを誘わずにはいられない痛快作だ。

特徴的なのは、豆腐小僧が自我に目覚めていく過程を軸にして、妖怪とは何かを順序だてて解説している点である。
地震を説明するための妖怪「鳴屋(やなり)」や、死を悟った人間のけじめとして現れる「死神」。
そのほか、狸や狐など、その由来や役割が、コミカルな物語に託して論じられる。
しかし、そこから垣間見えるのは、人間が感得しなければ、消えてしまう運命を背負った妖怪たちの悲哀だ。

本書には、近代化とともに失われていった日本人の心とは何かという深遠なテーマも映し出されているのである。


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